PDのためのスケッチ基礎の基礎


プロダクトデザイン(以下、デザイン)にとってコンセプトは大切です。アイデアも重要です。でも、スケッチも必要です。芸術的な絵が描ける必要はありませんが、伝えるための手段としてスケッチを描く力を持っていることは必須でしょう。とは言っても、デッサンの経験もない。子供の頃から図画は苦手というデザイナーを目指す人も心配はありません。コンセプトとアイデアを視覚イメージとして描くことができればよいのです。
デザイン開発の現場で身につけたスケッチの基礎の基礎を伝えたいと思います。美術の基礎に基づいていてるとは限りません。あくまで個人的なノウハウですが、デザイナーを目指す人に役立てればと思います。


その1:直線と曲線を描く

私は、アイデアスケッチを描くのにボールペンを使います。鉛筆でもよいのですが、ボールペンの方がすべりが良いので、線の勢いを感じますし、スムーズに描けます。そのため、アイデアもスイスイ出るような気がします。
まずは、体操のつもりで用紙(A4)に水平、垂直、斜めの線をみっちりと描いて腕の動きをスムーズにしましょう。


その次は、円を同じように、小から大まで描いて腕の動きに自由度を与えましょう。自由な動きが自由な造形を生み出すスケッチ表現を可能にします。





その2:立方体を描く


立方体を立方体に見えるように描くには、遠近法を理解する必要があります。それは、そんなに難しいことではありません。近くのモノは大きく、遠くのモノは小さく見える。このことを忘れないようにすることです。


立方体の隠れた側の稜線を描いてみましょう。立方体として矛盾していないかがわかるはずです。その次は、各面のセンターラインを描いてみましょう。A-aの長さはa-Bの長さよりも長くなければなりません。

単体で立方体が描けるようになったら、三次元CGでグルグル立方体を回すように、いろんな角度から描いてみましょう。これが自由に描けるようになると、頭の中に描いたイメージを自由に空間の中に置いて見ることができるようになります。






その3:円柱を描く

デザインにとって、基本形のスケッチが描けることが基礎の基礎であるとおもいます。それは、「豆腐やボールのようなデザインばかりをしろ」というのではありません。イメージの幅を広げその表現をするためには、自由な造形表現ができることは必要です。そのためにも基本形が空間の中でどのように存在するか、見えるかを理解する必要があります。



立方体の次は、円柱です。先の立方体もそうですが、私のスケッチは二点透視を基本としていますので、縦方向のパースはほとんど使いません。もちろん必要な場合はありますが、基礎の基礎では考える必要はないでしょう。円柱を描く基本は、底面の楕円が上面の楕円よりも円に近いということです。これさえ守ればそれなりに円柱に見えます。人は、「恒常視」という見方をします。これは、円は斜めから見ても円に見ようとするというものです。
 

もうひとつ大切なことが、円柱は立方体(直方体)の中にあるということです。右上のスケッチを参考にしてください。立方体を描き、その各面に中心線を引きます。円柱の端面をパースの平面に描きます。このとき常に中心線との関係を考えておくことが大切です。
少し影を入れてみました。立体に認識できるよう、見えるようにしてみました。少し太いサインペンやマーカーを使用したくなりますが、基礎の基礎ではボールペン(または鉛筆)のみで描きます。




その4:球を描く




球は、平面上では円です。平面上の円を球に見せること。空間に球として存在させることが必要となります。円を描いて色いボールをイメージします。イメージを助かるために球の中心点を含む水平面上の線(地球の赤道線)を描きます。もう一本、中心点を含む垂直面上の線(地球の子午線)を描きます。そして、「この円は球だ」と思い込むのです。

影も大切です。そのためには、いろんな光の中(空間の中)で球体を観察することが大切です。その行為の中で概念的に球と見えるための法則がわかってきます。基礎の基礎では、素材は石膏のような反射のない白い球体をイメージします。光源は左上を想定します。自由に光源の位置を変えることは次のステップとして、光源は当分の間、左上で考えましょう。というか、私の30年のデザイン活動の中で、スケッチレベルではこれ以外の光源位置は使っていません。
右図は、円柱の両側に半球を描きました。カプセルのような形です。
左図は、球体に球体をスタッキング(重ね合わせる)できよう様な凹みを付けてみました。